当法人の事務支援先における不適切な会計処理に関するご報告
- #2024
2024年8月30日
当法人の事務支援先における不適切な会計処理に関するご報告
特定非営利活動法人岡山NPOセンター
代表理事 高平 亮
平素より当法人の運営に格別のご高配を賜り厚くお礼申し上げます。
2024年5月14日に当法人のウェブサイトでお知らせしたとおり、当法人の関与した不適切な会計処理について、自主的に調査を行った結果や再発防止策等について、以下のとおりご報告いたします。
1 「当法人の事務支援先における不適切な会計処理」の概要について
2023年12月、一般社団法人全国コミュニティ財団協会(以下「CFJ」と申します。)より、公益財団法人日本財団(以下「日本財団」と申します。)の助成事業における不適切な会計処理があったことが発表されました。この発表を受け、2024年1月10日に実施した当法人の理事会にて当時の副代表理事(2016、2017年度は副代表理事、2018年度より代表理事)から聞き取りを行った結果、2016年から2018年に当法人がCFJから委託を受けて会計及び事業報告等の事務支援(以下、「本事務支援」と申します。)を行っていたこととCFJにおいて、不適切な会計処理が行われていたことを確認しました。
不適切な会計処理の具体的な内容はCFJが設置した第三者委員会による調査報告書(2024年6月13日)に詳しく記載されておりますので、そちらをご参照ください。
一般社団法人全国コミュニティ財団協会「日本財団助成事業における不適切な会計処理に伴う助成金の一部返還の第三者委員会からの調査報告書の受領について」
2 不適切な会計処理の発覚から現在までの経緯について
1月10日の理事会以降、当法人の役員を中心に事実確認と再発防止策の検討を進めてきました。同年8月現在までの経緯は以下の資料のとおりです。
3 不適切な会計処理に対する当法人の関与と責任について
不適切な会計処理に対する当法人の関与と責任について事実確認と再発防止策等の検討を行った経緯及び結果を抜粋してご報告いたします。
・ 3月11日、監事による事務支援センター所長へのヒアリングを実施して、本事務支援の内容、担当者とその役割等を確認しました。その結果、本事務支援に従事していた事務支援センター所長ともう一名の担当者は不適切な会計処理の発案に関与しておらずCFJの指示に基づいて処理していたこと、ならびに当時はCFJから不適切な会計処理を指示されているとの認識はなかったことを確認しました。また、もう一名の担当者は2020年に退職しており、連絡を取る手段がなかったため、ヒアリングを実施しませんでした。
・ 4月14日に実施した理事会にて、事実確認及び再発防止策の検討を行う体制について協議した結果、理事会がその役割を担うことを決定しました。
・ 4月26日から30日にかけて、2016年度から2018年度に在籍したすべての役員(18名/当時の副代表理事を除く)に対してウェブフォームによる匿名のアンケートを実施しました。その結果、本事務支援の意思決定ならびに業務に関与していた役員は0名、当時の事業関係担当者から相談を受けていた役員が1名いることが確認できました。
・ 4月30日、理事会により当時の役員に対するオンライン(Zoom)での一斉ヒアリングを実施しました。参加した当時の役員は11名で、全員が不適切な会計処理の発案及び実務への関与を否定しました。
・ 5月14日、担当者から相談を受けていた役員への個別のヒアリングを実施しました。(アンケートは無記名でしたが、回答の内容から個人を特定することができました。)ヒアリングの結果、相談を受けた相手はすでに退職している担当者であったこと、ヒアリング対象となった役員と担当者はいずれも不適切な会計処理の発案に関与していなかったこと、相談の内容は実務的なものであり、本来であれば当時の副代表理事または事務支援センター所長に相談すべき内容であったが、全員が余裕のない状況であり、相談し合える状況ではなかった(ように伺えた)ことを確認しました。
以上の結果から、不適切な会計処理の発案に関与していたのは当時の副代表理事のみであったこと、また、不適切な会計処理の実務に関与していたのは事務支援センター所長のみであったこと(前述のとおり、CFJから不適切な会計処理を指示されている認識はなかったこと)を確認しました。
4 事務支援先において不適切な会計処理が発生した原因について
理事会では、これまでに実施した関係者へのヒアリングの結果とCFJ(第三者委員会)の調査報告書に基づき、不適切な会計処理が発生した原因を以下のように考えました。
(1) 相互牽制が機能していなかった
当時の副代表理事がCFJの常務理事・事務局長を兼任していたため、権限が集中してしまい、他者のチェックが働きづらい体制でした。
また、事業規模の拡大とともに意思決定と執行の大部分を担っていた当時の副代表理事に対する依存度が高まっており、その他の役員が事業の状況を細かく把握することが困難な状況・空気感ができていました。
(2) 契約相手の法令・規範順守に関する方針が定められていなかった
当時の事務支援では、契約相手に法令違反が発生した場合の対応は想定しておらず(契約書にもそのような項目は含まれておらず)、当法人の担当者は契約相手が受託している助成事業のルールの確認やその順守は契約相手の責任範囲と認識していました。任意団体や設立間もないNPO法人などが対象となる場合は相談を受ける頻度が多くなるため、随時、必要なアドバイスを行うことができましたが、CFJに対しては相互に信頼関係が築かれていたこともあり、必要最低限の連絡のみで業務を進めていたため、不適切な会計処理に気づくことができませんでした。なお、仮にCFJからの指示に対して疑問・異存を持っていたとしても最終的な判断はCFJに委ね、結果的に同様の処理を遂行した可能性が高いと思われます。
(3) 契約書における業務内容の記載が不明確だった
CFJとの業務委託契約書では、業務内容は以下のように記載されていました。
(2016年度)
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一、基本業務、入出金管理、帳簿記載事務、財務諸表等の作成事務
二、甲が受けた助成金に関する会計及び事業報告
三、その他上記業務に関し付帯する業務(1) 経理事務に関する業務
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(2017年度、2018年度)
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(1)経理事務に関する業務
(2)決算事務に関する業務
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相互の信頼関係のもと、特に2017年度・2018年度は柔軟性の高い支援を実現するためにあえて細かい記載を省略したものですが、その結果、当時の副代表理事や担当者のみに判断が委ねられ、裁量が広範化することになりました。
(4) 担当者のサポート体制が整備されていなかった
元役員へのヒアリングから明らかになったとおり、2016年度から2018年度は本事務支援に関わった当時の副代表理事、事務支援センター所長、担当者の業務(本事務支援以外の業務を含めて)がひっ迫した状況にあり、それぞれに相談したり、配慮し合ったりするための時間的な余裕がありませんでした。また、担当者以外の役職員が業務内容を確認したり、相談を受けたりするしくみもなく、担当者の業務上の悩みは自身で解決するか、業務に理解のある一部の役員に相談するしかありませんでした。このような環境により責任者及び担当者の正しい判断力が奪われたことも不適切な処理が執行された一つの要因であると思われます。
なお、2020年度以降は各理事に担当事業を割り振る「担当理事制度」を導入したことで、理事が事業の状況を把握しやすく、早期に問題に気づきやすいしくみづくりが進んでいます。
5 再発防止策について
原因の特定と並行して、再発防止策を検討しました。4月30日に実施した「当時の役員へのヒアリング」にて出席者から具体的な提案を受けたほか、その後も様々な機会に関係者から情報提供をいただきました。あらためて、ご協力くださった皆様に感謝を申し上げます。
なお、以下の再発防止策は現時点の考えをまとめたものであり、今後も関係者のご意見を取り入れながら新たな対策を検討するとともに、対策を実行しながら検証と改善を重ねてまいります。
(1) 利益相反関係の事前点検の実施
※原因「①相互牽制が機能していなかった」に対する再発防止策
事務支援の契約時及び更新時に契約相手と当法人の役員を対象とした利益相反関係(主に役職員の兼任)の有無をチェックします。
具体的な方法としては、当法人の役員の就任時、職員の雇用時に他組織との兼任・兼職状況を確認のうえ、新たに兼任・兼職が発生する際には当法人の「ガバナンス・コンプライアンス整備に向けた基本規程」に基づき、事前に代表理事への書面申請及び承認が必要となることを理事会で確認します。職員に対しては2024年9月下旬に実施予定の職員ヒアリングにて、代表理事より個別に上記規定の内容を伝達し、順守を促します。そのうえで、新たな事務支援(事務代行)の契約時には現状と照らし合わせ、兼任・兼職のない役職員を担当者とします。また、新たな契約が発生した際には、事務支援センター所長より担当理事会議と理事会にて報告を行うこととし、複数の体制で兼任・兼職が発生していないことをチェックします。
(2) 法令順守に対する働きかけの強化
※原因「②契約相手の法令順守に関する方針が定められていなかった」に対する再発防止策
当初より事務支援(事務代行)は、契約相手が社会的使命の達成により専念しやすい環境を提供するための側面・後方支援という位置づけでしたが、契約相手の法令順守に対するコミットメントが十分ではなかったことで契約相手の不適切な会計処理を指示通りに遂行し、結果的に契約相手の使命達成を停滞させてしまいました。
この反省をふまえて、契約相手に対して法令順守をこれまで以上に強く働きかけ、不適切な指示を受けた場合は、指示が不適切である理由・根拠を指摘するとともに、より適切な対応をともに考え、提案します。また、こちらの提案に契約相手が応じない、考え方に改善が見られない場合は契約の解消を申し出ます。
(3) 契約内容の明確化
※原因「③業務内容が不明確で契約相手との共通認識がはかれていなかった」に対する再発防止策
対契約相手・対内部との相互牽制を健全に機能させるため、関係者間での契約内容の共通認識を丁寧にはかり、業務内容や契約解除の要件を契約書に明記します。
(4) 業務内容と進捗状況の共有
※原因「④担当者のサポート体制が整備されていなかった」に対する再発防止策
担当者の孤立を予防するため、理事・監事が事業の問題や状況を把握する機会を増やします。
具体的な方法としては、2020年度より導入している担当理事制度に加えて、3つの事業(事務支援センター、地域連携センター、参画推進センター)で毎月1回実施されている職員会議に担当理事が参加することで、さらに詳細な情報共有と即時的な対処につなげます。また、職員に対して、業務における悩みは担当理事へ相談することが可能であることを伝え、選択肢の多い、風通しの良い職場環境をつくることを目指します。
6 会員からの要望とその回答について
2024年6月27日、当法人の会員より要望書をお預かりしましたので、その内容と当法人の回答をお知らせいたします。なお、要望書は公開を前提とされたものではなかったため、一部の誤字等を当法人で修正し、内容を意訳したものを以下に掲載しています。
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(1) 2年間で約200万円の業務委託費収入を理事会の決議なく寄付したのか?あるいは実際にはもらうべきものなのに支払われず勝手に寄付にして法人に損害を与えたのか?
(2) 実際に払われた金額はいくらか。その額は適正か。適正な場合、200万円は全く実態のない架空請求なのか。
(3) 適正な経過報告の欠如について。既に2022年の段階で日本財団から説明が求められており、2022年8月には全国コミュニティ財団協会の役員が岡山センターを訪問、監査をされているが、これは岡山センターの理事会に報告がなされたのか?理事は相談を受けていたのか?
(4) 全国コミュニティ財団協会の処分の内容について情報はあるのか?改めて業務委託費の問題は岡山NPOセンター自身の問題であり、我々の法人の規定に抵触しており、その処分をどう考えるか?
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要望書の主旨は上記1~4の質問に対しての当法人の回答を求めるものでした。
これに対して、当法人では監事に調査を依頼しており、その結果が以下のレポートにまとめられております。
なお、業務委託費の一部を受取寄付金として計上したこと(帳尻合わせ)による実質的な損害は発生していないなどの理由から、当時の副代表理事、担当職員ならびにその他の理事、監事の責任は問わず、処分を行わないことを決定しました。
以上がご報告となります。
2024年8月8日に開催された臨時総会にて役員変更があり、新たな体制のもとで再発防止に取り組んでいくことになりました。これについては別途ご報告をさせていただきます。
最後に、当法人の事務支援先において不適切な会計処理が発生したことは大変残念であり、当法人としても会員及び関係団体に心配をお掛けしてしまったことを反省し、誠実に再発防止に努めてまいります。